PAY DAY!!!
「大佐、今日は何の日だ?」
「唐突にどうした、鋼の」
「今日は給料日だぜ大佐」
「おお、そうだったな。早速君の伸ばしに伸ばした借金を利息だけでも返してもらおうか。なんなら体で払ってくれて一向に構わんぞ?」
「オレの過払いにも程があるだろ、それ。――それよりさ、飲みに行こうよ皆で。今日は花金だぜ」
「花金……またファルマンから聞いた言葉を得々と使って――言っておくが、とっくに死語だぞ」
「マジで?普通に使ってたぜ少尉」
「うむ…あいつならありえるが……。しかし、飲み会か。丁度いいかもしれないな。君の歓迎会も、忙しくてやっていなかったし」
「だろ!?やっぱり職場には飲みにケーションが大事だと思うんだ」
「それもファルマンの受け売りか?それにしても、もう勤務交代時間じゃないか。今から声を掛けて集まるのか?」
「大丈夫だって!全部大佐のおごりだって言えば」
「――さらっと何を言ってるんだ君は!」
「けちけちしてると部下がついてこないぜ、大佐?」
「君は知らないかもしれないが、ここの人間は皆うわばみなんだよ。財布が幾つあっても足りんのだ!」
「オレとあんたの錬金術が役に立つ日が来たぜ」
「……私のはともかく、君の練成した酒は絶対に飲みたくないな」
「とりあえずあんたにはメチルを飲ませるから安心しとけ。それにしても、皆、酒強いのかあ」
「ああ……。何度か飲みに行ったが、最後まで記憶があったことがないんだ、これが。気がつくと朝になっていて、財布から金だけがごっそり消えているんだ」
「あんた、意外と酒弱いもんな。この間のオレの18の誕生日の時だって、あんたべろんべろんだったもんな」
「君とショットガンなんてするんじゃなかったよ。十二杯も立て続けに飲んで平然としているなんて、酒が強いにも程がある。まさか、隠れて飲んでいたんじゃないんだろうな?成長期の飲酒は発育不良の原因だっていうし」
「誰が発育不良だって!?――あんなの飲んだ内にも入らねぇだろ。ちまちま飲ませやがってよ。大体、飲ませたのは大佐じゃねぇか。……まったく、酔わせて何をするつもりだったんだか――いや、いい。答えなくていい」
「普通は一杯で腰が抜けるんだがな……。まったく、成人したばかりの君に負けるとは思わなかったよ。それにしても、どうして私のまわりに酒好きが集まってくるんだろう」
「あんたが金持ってるからじゃねえの?」
「君だって歳と身長に見合わぬ高給取りじゃないか」
「身長は余計じゃボケ!こう見えてもオレはお金ないの!宵越しの金は持たないの!」
「これぞまさにエドっ子……いや、今のはファルマンの受け売りなんだ、信じてくれ」
「部下のせいにする上司は嫌われるぜ?まあいいや。とりあえず皆に声掛けてくるから」
「ああ。店は私の方で決めておくよ。――やれやれ、やっと恋人同士になれたと思ったら。二人で飲めるのはいつになるのやら。……ま、そこがエドのいいとこ
ろか。それにしても、飲み会なんて久しぶりだな。店はどこがいいかな。――中尉はカクテル一辺倒だし、ハボックはウィスキー、ブレダは黒ビール……おや、
早いな鋼の。皆来れそうか?」
「飲み会やるって言ったら皆喜んでたんだけど……」
「だろうな」
「あんたが来るって言ったら、皆用事あるって帰っちゃった」
「……」
「……」
「……」
「……人望ねぇ」
「……返す言葉もない」
「皆で飲みたかったな」
「すまん」
「まあ、まだ仕事も少し残ってるしな」
「――鋼の。君はもう上がりなさい」
「え、だってオレの仕事が…」
「私が片付けておくから。君は先に帰って、私の家で待っていてくれ。帰りに酒屋に寄ってね。――皆で飲むのはまたの機会にして、二人でゆっくり飲もう?今日はせっかくの給料日だ」
「……いいぜ。そう来なくっちゃ。明日はオレもあんたも公休だしな。思う存分飲んでやる!ビールに、ワインに、スピリタスに……それから、何がいいかな。――もちろん、あんたのおごりだよな?」
「――安心しろ。体で払う」
「いえ……それは丁重にお断りいたします」
「遠慮しなくていいぞ、エルリック少佐」
「誰が遠慮なんかするか、この色ボケ大佐が。あんまりしつこいとセクハラで訴えるぞ――とにかく、あんたのツケってことで!じゃ、お先」
「お疲れ――やれやれ、早いところ帰らないと、酒が無くなってそうだな。……それにしても、平和だなぁ」
2009/11/01
軍豆プチオンリーでのペーパーラリーに書いたSSです。
タイトルは山田詠美の小説よりお借りしました。