「もう、どうだっていい…」

肩から滑り落ちた真紅のコートが、床に鮮やかに広がっている。
意思の無い人形のように投げ出された手足。
引きちぎられた水仙の花がその手から落ちていた。

「アルが、オレを必要としてくれないなら、オレは、ここにいる意味なんて無いんだ」

少年は、絶望に押しつぶされそうな声で呟いた。
力なく寄りかかってきた体。まるで打ち捨てられた花のように、萎れて。
私が近寄る事すら、あんなに嫌がっていたのに。
今は、廻された私の腕にも、何の抵抗も無く抱き寄せられている。

「…あんたの好きにしていいよ」

うつろな目を私に向けて、微笑らしきものを彼は浮かべる。胸が痛くなるような笑い方だった。
すがるような腕が、私の手を掴む。まるで、そうしないと、どこかへ流されてしまうかのように。
少年が私の胸に顔を埋める寸前、彼の頬に涙が光っているのが見えた。

「あんた、俺が欲しいとか言ってたよな。……いいぜ、くれてやるよ。今なら。」

その言葉は、私の気持ちに応えたものではなくて。
溺れるものが藁をも掴むのと同じ。誰でもいいのだ。私で無くても。
彼の、心の空白を、埋めて、満たしてくれるものなら。何でも。

「何も、考えたくないんだ―――だから…」

私は、震える手で、彼のコートに手をかけた。
身をよじって、抱きついてきたエドワードの体を受け止める。
儚げな花弁が踏みにじられる音が、遠くで聞こえた。


黄水仙の花言葉は、「愛に応えて」


jonquil

2009/09/15

Novel